全く言い逃れのできない、完全なるこちらの過失によって、
とある店先の器物を損壊してしまい、
それを修復するのに600万かかると言われてしまう。
顔面蒼白でフラフラと歩く帰り道、
「こんなところで、こんなところで俺はとうとうヘマをしちまった!」
と顎がガックシ下がる。
クランクアップを済ました、とある映画のスタッフキャストの集合写真を撮影することになり、
大仕事を終えて、実に充実した笑顔をカメラの前に差し出す彼らを
そのセットの前で撮影する。
いくつも並んだその笑顔を、4×5のカメラでパチリと撮影すると、
途端、皆が口々に「お疲れさまでしたー!」と言いながら、散開して行った。
カメラをカメラバッグにしまい、一人になった途端、
ピントグラスでフォーカスを確認する時に、露出を開放にして、
そのまま適正の露出に戻すことなく撮影した気がし始める。
とその時、いやまてよ、と思う。
「いや、待てよ、その前に・・・フィルムホルダーにフィルムを入れた記憶がない!」
やはり顔面蒼白。
言い訳のつかないミスに頭がグラッグラになる。
「もう駄目だ。終わった。600万の借金に、仕事のミス。俺もう、死んだ方がいい」
フラフラと歩く帰り道、この窮地を脱するには、もう奇跡が起こるしかないと思ったね。
どこかに600万円落ちてないかな?
髭もじゃのジーザスが突然現れて、
時間を、あの集合写真の撮影前に戻してくれないだろうか?
もちろんそんな奇跡は起こるはずもなく、
世の果てへと向うようにやっぱりフラフラと歩き続けた。
と、そこでやっと目が覚めました。
「なんだ〜夢落ちか〜」なんて言わないでチョーダイ!
目が覚めた時には本当に「奇跡だ!」と思ったんですから。
目が覚めた途端、600万の借金も、仕事のミスも帳消しに。
今日一日、生き返ったように働きました。