吉祥寺の駅前で飲んで、酔いを冷ますために公園のベンチで一休み。
ベンチの上でゴロッと横になろうと思ったが、真ん中にある仕切りが邪魔でどうしても上手い具合に横になれない。
試行錯誤、四苦八苦してもやっぱり上手い具合に横になれない。
こうなったら例の仕切りに頭を突っ込んでみようかとも思ったが、
頭がはまって抜けられなくなりそうで、諦めた。
「いったい誰がこんな馬鹿げた物を考えたんだ!」としばらくその仕切りを眺めた。
映画『マディソン郡の橋』で、イーストウッドがメリル・ストリープと初めて出会い、道案内をしてくれる彼女を自分の車に乗せる時、イーストウッド演じるキンケイドはベンチシートの運転席と助手席の間に自分のカメラバックを置く。
あれは、まあ、見知らぬ男の車に乗る人妻の不安を慮った彼の優しさなのだろう。
ところがしばらくすると、彼は車の運転をしながら、煙草の箱を取るために、自ら作った仕切りをやすやす乗り越えて、グローブボックスへと手を伸ばす。
その時、キンケイドの腕がメリル・ストリープ演じるフランチェスカの膝に触れ、彼女はサッと足をよける。
実に官能的なシーンだ。
初めてのデートで公園を訪れた男女が、このベンチの仕切りを挟んだこっち側と向こう側に座った時、男はいったいどういう口実で、この仕切りを乗り越えるのだろう?
いくら考えても思いつかなかった。
「まあ、こんなベンチじゃなくても、男女が並んで座るところはいくらでもあるか」と、ベンチで横になる事を諦めて、滑り台で横になった。
やれる事をくたばるまでやり続けるだけだ。
タフな想像力が必要だ。
被災した人々に自分が出来る事はそんなに多くない。
まずは、少しでも支援が出来るように、仕事のあるうちは必死で働かなければ!
と滑り台で横になりながら思った。