他人の庭

３月の頭に引っ越してきたボロアパートの向かいは２階建ての古い一軒家です。

｢古い」といってもいい方の｢古い」ではなくて、

 

｢手入れをしなかったらこんなんなっちゃいました」

 

といった感じの古い一軒家。

どうやら初老の夫婦の２人暮らしみたい。

うちのベランダを挟んで５m位しか離れていないので、

奥さんの電話の声がよく聞こえます。

たいていは病気の話と死んだ人の話。

 

17時を過ぎるとジャズが聴こえ始めます。

こちらは旦那の方の趣味でしょうか。

漏れてくる音からして相当なオーディオセットを持っている感じ。

重低音のベースラインが聴こえてきます。

 

とても広い庭があって、桜や杉、紅葉や松などがあります。縁側には藤棚。

庭の方も「手入れしなかったらこんなんなっちゃいました」といった感じ。

左右の眼の色が違う白ネコとキジトラネコの２匹が天気のいい日には寝そべっています。

 

夜になると風に揺られて庭の木がザワザワと音を立て始めます。

どっかの外れかかったトタンがバタンバタンと鳴る音も聞こえます。

ベランダに置いたビーチチェアにドカッと座って、他人の庭を眺めながら、その日最後の１杯を飲むのが今俺の中で流行っています。

不思議とよく考えがまとまります。

前向きなアイデアが溢れてきます。