飲みの席で、トイレに立つという事は滅多にない。と思う。
相手が年上というケースが多い事もあるのだけれど、
話の腰を折ってトイレに立つという事が苦手なのだ。
小便を出し終わって、スッキリした顔で戻って来た後の、
「・・・で、なんでしたっけ?」という瞬間が嫌いだ。
下手をするとトイレから戻ってくるなり
「それじゃ、そろそろ行こうか?」という事になり、そんな時は実に寂しくなる。
そんなわけで、飲みの席では自然と小便を我慢する事になる。
不思議な事に我慢をし続けていると、次第に便意そのものを忘れてしまう。
人体の不思議だ。
駅の改札などで別れた後も、しばらく忘れている。
窓から流れる景色を眺めながら、
その日の飲みの席での楽しかった会話を思い返しながらも、
まだ忘れている。
向いに立った女の人の横顔にうっとりしながらも、
まだ忘れている。
急に思い出すのは、自分の駅に着いた時で、そんな時は扉が開くと同時に「やべー、やべー」とエスカレーターを駆け上がる事になる。
で、「誰にも負けない」というのは何の話かというと、
それは駅のトイレでする小便の長さの事で、
隣に立ち並ぶ男たちに、今までその長さで負けた事がない。
あれは、このまま一生止まらないんじゃないかと思うほどの長さだ。
それはそうと、昔はよく見た、消臭剤というか何と言うか、
あの男性用小便器に転がっていた黄緑色の丸い物体、あれ最近見ませんね?
あれにむかって「このやろ!このやろ!」と小便をかけるのが
たまらなく好きだったのに。