いんや〜、ムチャクチャ楽しかった〜!
先日は2泊3日で『アイム・オール・ライト』山梨ロケでした。
俳優の礒部泰宏さん、原田亮さん、撮影助手の三本松淳さん、そして今回が星野組初参加となる俳優の蓮尾卓美さん、そして私の男5人で朝の9時に東京を出発しました。
北海道ロケ以来の泊まり撮影。
準備には相当神経を使いました。
ロケ先の協力依頼から宿の予約、衣装小道具、撮影機材の準備、撮影スケジュール作り、その他あれやこれや・・・。全ての準備が終了した頃には情報量の多さに頭が破裂しそうになってました。
全てをリストアップした香盤表を作り俳優さん達に事前にメールしました。
礒部さんだけに「一応、抜けがないかチェックしておいてね♡」と伝えました。
礒部さん、星野組長いですからね。
しばらくして返信が届きました。
「シーン24が抜けてます(笑)」
いやー、助かります!頼りになります!
中央道に乗り、平均時速80キロの安全運転で一路山梨へ向かいます。
途中談合坂サービスエリアでトイレ休憩。
ここで既に出発当初から花粉症に悩まされていた礒部さんと蓮尾さんの症状が激化。
二人ともクシャミが止まらなくなりました。
「談合坂やべー、談合坂やべー」
と逃げるようにサービスエリアを出発。
車の中でも二人はクシャミを連発。
降り口の須玉ICに着く頃には二人の症状もだいぶ軽減してきましたが。
高速を降りてすぐの『ガスト』で昼飯を食べて本日のロケ地『畑山農場』へ向かいます。
『畑山農場』の畑山貴宏さんは去年の夏、友人の稲村朋子さんに紹介していただきました。
大まかなシーンの説明をして、撮影協力を依頼すると快諾してくださいました。
最初は10月あたりを予定していたロケですが各方面スケジュールのバッティングにより今月と相成りました。
予定より30分ほど遅れて13:30「畑山農場」に到着。
畑山さんに皆でご挨拶。
すぐに衣装に着替えて、この日最初の撮影に臨みます。
農作業のアクションがある礒部さんと原田さんは先に畑に向かい畑山さんに作物の取り方を教わります。しばらくして衣装に着替えた蓮尾さん登場。
蓮尾さんの役柄は東京から逃げてきた「井上」と「青木」の面倒をみる農家の親方「片山」役です。
私がカメラ位置を探している間に3人はセリフのやり取りのリハーサルを勝手に始めています。
カメラセッティングが終わり「じゃ、リハ行きますか?」
と聞くと3人がカメラに向かって頷きました。
実は私が蓮尾さんの演技を見るのはこの日が初めてでした。
「じゃ、リハ行きます。よーいスタート!」
リハなんて言っておきながらこっちは内緒でカメラ回します。
2泊3日山梨ロケのファーストカット。
「はい、カット!」
カメラを止めて3人を見ると礒部さんと原田さんがこっちに向かってニヤニヤと笑っていました。二人とも蓮尾さんとの芝居をとても楽しんでいる様子でした。
元々何の心配もしてはいませんでしたが、このファーストカットで「よし、いける!」と、これからの撮影が楽しみになりました。
しかし俳優とは不思議な生き物です。
礒部さんと原田さんはこの日が3度目、2人と蓮尾さんは初顔合わせ。
それなのに3人はあっという間に登場人物の関係性と人間性を表現して行きます。
バックグラウンドもアプローチもそれぞれ違う3人の俳優が1つのシーンをアンサンブルしていく様を目撃できるのは監督冥利に尽きます。
別の畑でもうワンシーンを撮影し本日のデイシーンは終了。
撮影後に蓮尾さん
「あれ?おれ『片山』やってる時は花粉症なくなってるな。おし!もうずっと『片山』でいよう!」
次のナイトシーンまで明日以降の撮影のリハーサル。
アクションを交えて4人で確認して行きます。
(撮影:三本松淳さん)
日が暮れて室内シーンを撮影。
礒部さんと原田さん二人の会話シーン。
ほぼ準撮りの為か二人の間合いがとても自然になっています。
シーンのラストに「片山」登場。
順調に各カット2、3テイクほど撮影してこのシーンは終了。
本日のメインイベント「宴会」シーンの準備に入ります。
今回、この宴会シーンのために畑山さんが仲間の農家さんたちを集めてくださいました。
このシーンは蓮尾さん演じる「片山」が近所の農家さんを集めて「井上」と「青木」の歓迎会をするというシーンです。
カメラセッティングをしている間に続々と農家さんたちが集まってきます。
面子も揃い、セッティングも終わり撮影に入ります。
「さて、皆さん、ここは歓迎会での裸踊りのシーンです。盛り上がってください!」
と農家さんたちに説明。原田さんと礒部さんは早速裸踊りの準備に入ります。
1番手は原田亮さん。
裸踊りといってもタオル一枚で「ヒョイ、ヒョイ」っとやる非常にクラシカルなものです。
画面上アレな事故が起きると困るのでカメリハをやります。
色々な意味での亀リハです。
すみません。失礼いたしました!
私「亮くんさ、こっち向くと危ないからさ、ケツをこっちに向けてやってくんない?」
原田さん「こうですか」
私「そうそう。向こう行けばピントはずれるからさ」
そんなやり取りの後撮影開始。
皆さんの拍手に迎えられ原田さんが踊り始めます。
カメラを回しつつ、三脚のパン棒を握る私の手が震えました。
ちなみにパン棒とはカメラをパンする時に使うハンドルのことです。
あっちの棒とは関係ありません。
すみません。失礼いたしました!
下ネタはさておき、それぐらい素晴らしい踊りでした。
回転技を加えてかなりピョンピョンと飛ぶのですが絶妙にタオルと太ももでアレを隠します。
礒部さんが必死に笑いをこらえていました。
つか、笑ってました。
会場前方から踊りを終えた原田さんが戻ってきます。
そこでしばし礒部さん演じる「井上」とセリフのやり取り。
酔っ払った「片山」が二人の元にやってきます。
「今度お前、井上の番」
次は礒部さんが踊りに入ります。
これも素晴らしかったです。
原田さんとは違って観客を言葉で挑発する素晴らしい裸踊りでした。
このシーン、踊りに関しては完全にアドリブでした。
「役者ってすげえな~」
と舌を巻きました。
私だったら絶対できませんね。
そっこう逃げます。
これにて本日の蓮尾さん出演シーンは終了。
心ゆくまで宴会を楽しんでください、と蓮尾さんを宴会場に、我々は次のシーンの撮影準備に入ります。
畑山さんの家の駐車場でのシーン。
しかしここで山梨ロケ初のトラブル発生!
劇用車としてお借りした稲村さんのサニートラックのエンジンがかからない!
バッテリーが上がっとる!
宴会準備中、というか既に宴会が始まっている会場にもどり畑山さんにSOS。
畑山さんにバッテリーのブースターをお借りしてロケ車のバッテリーとつないでエンジンスタート。
(原田亮さんと稲村さんにお借りしたサニートラック)
・・・エンジンかかりません。
バッテリー死んどる・・・。
と時を同じくして私の携帯が鳴り始めます。
「もしもし?」
「もしもし?○○清里山荘の**ですが。今日のチェックインは何時頃になりますか?」
「あ、すみません!今ちょっと仕事が長引いていまして・・・」
「あの、うちのチェックイン21時までなんですけど」
「え?・・・で、今何時ですか?」
「21時です」
「・・・」
今回のロケ、私が住んでいる町が運営している宿泊施設で予約していました。
宿泊費も安く、たまたまロケ地の畑山農場さんから20分のところに位置していたからです。
○○山荘「・・・あの、21時過ぎると入れなくなりますよ」
私「まじすか?ちょっと、なんとかなりませんかね?」
○○山荘「あとどれぐらいで来れます?」
私「えーと・・・早くて23時ぐらいですかね」
○○山荘「無理ですね。鍵閉まりますから」
私「え?締め出されるわけですか?」
山荘「ええ」
私「でも常駐してるんですよね?管理人さん」
山荘「あのですね!うち一応『青少年の森』○○山荘なんですよ!」
私「(こいつ急に青少年とか言い出した!)・・・そこをなんとかなりませんかね」
山荘「22時までですね」
私「22時。わかりました。すみませんご迷惑おかけして」
チン。
あと1時間で撮影終わるわけないです。
駐車場に戻ると畑山さんが別のバッテリーをサニトラに装着していてくれました。
ブースターをつないでエンジンスタート。
今度は1発でエンジンかかりました!
「畑山さんありがとうございます~!」
皆で頭を下げます。
しかし宿泊問題がまだ解決していません。
礒部さんに相談します。
私「どうすっぺか?」
礒部さん「えーと、あれじゃないですか?蓮尾さんもう撮影終わってるから、先に蓮尾さんを宿に連れて行ってチェックインして貰って、僕らの撮影が終わったら内側から鍵開けて貰えばいいんじゃないですか?」
あったまいい~!
すぐそのことを伝えに宴会場に戻ります。
宴会場に戻ると撮影を終えた蓮尾さんは既に農家さん達と宴会真っ盛り。
非常に盛り上がっていました。
私が宿泊問題を伝えると「うむ」と行った感じで頷くのですがイマイチ流れが掴めていない様子。
と畑山さんが言いました。
「ここに泊まればいいじゃないですか?」
「まじすか?」
「いいですよ。ここでよければ。布団も人数分ありますよ」
新たな選択肢が増え、一瞬私の脳が思考停止になります。
と蓮尾さんが言いました。
「泊まらせて頂きましょうよ。向こうのキャンセル料は?」
「100%です」
「泊まっても泊まらなくても払うんですね?」
「ええ」
「でも、俺送る時間無駄でしょ?」
「はい。でも風呂入れませんよ」
「いいよ風呂なんて」
「ホントいいですか?」と畑山さんに聞くと「全然いいですよ」と畑山さん。
「すみませんお世話になります!じゃ、撮影続行します。皆さん宴会続けてください!」
駐車場に戻り礒部さんと原田さんに事の成り行きを伝え、撮影再開。
ライティングに手こずるかと思っていたのですが割とスムーズに撮影終了!
本日ラストの撮影に宴会場に戻ります。
宴会場に戻ると場は更に盛り上がっていました。
「盛り上がっているところ誠に申し訳有りませんが、今日最後の撮影になります。皆さん雑魚寝してくださーい」
宴会場の皆さんに雑魚寝して貰って本日最後の撮影。
ライティングに少し時間がかかりましたが無事終了!
そしてそのまま宴会に突入!
どこからそういう流れになったのか忘れてしまいましたが、集まってくださった農家の皆さんが農業を始めるに至った経緯を自己紹介とともに話してくれました。
どの方も皆それぞれドラマティックな経緯を経て農業にたどり着き、日々より良いものを作ろうと試行錯誤している様子が伝わり、おこがましくも私は「我々の映画作りと同じなんだな」と思いました。
せっかくなので集合写真を撮りましょう!と写真家の三本松さんに頼んで宴会の集合写真を撮りました。
皆さん若い!いい男!そしておしゃれ!
画面前列左の男性が、今回の撮影で何から何までお世話になった畑山さんです。
ちなみに真ん中の赤いアノラックを着てヤンキーピースをしている人はたぶん野菜は作っていないと思います。だいぶ溶け込んでいますが。
その後ろの青いセーターを着た人は青島幸男さんではありません。多分監督だと思います。
宴も終わり「おやすみなさーい」と皆散会し我々は布団を敷き始めます。
と、三本松さん、
「星野さん、僕これから仕事していいですか?」
「もちろん。どしたの?」
「ちょっと急な仕事が入ってしまって」
まあ凄い時代ですね。
どこにいても何時でもデータのやり取りができますからね。
「(三本松さんのラップトップを見ながら)これどれくらいまでかかるの?」
「3時くらいですかね」
「頑張って!」
皆が布団に入っていびきをかき始めた後も三本松さんは粛々と仕事を続けていました。
「がんばれや~、サンちゃん~」
と私も眠りにつきました。
皆が寝静まったあと仕事を続ける三本松さん。今日は1日ありがとう!
『アイム・オール・ライト』山梨ロケパート2はまた後日!