と言えば、フランソワ・トリュフォー監督の映画の題名ですけど(傑作!トリュフォー作品の中で実は一番好き)、
俺にとっては、隣に住む婆さんの事です。
酒飲みの婆さんです。
年齢不詳です。
10年ぐらい前に聞いた時は「おばあちゃん?ウフッ、もう80よ」と答えたけど絶対ウソです。
その婆さんから久し振りに声がかかった。
「星野さーん!」という声が聞こえたので縁側の窓を開けると、もうかなり酔っ払った態の婆さんが庭に立っていた。
こっちもすでに酔っ払っていたので、暫し立ち話をする。
婆さんは差し入れに、バターピーナッツと温室みかんを持ってきてくれた。
「あなたお酒は?」
と、もうずいぶん前だけど、さしで飲んだ記憶も多分忘れてしまった婆さんは俺に聞く。
もちろんと答えると、何を飲んでいるかと聞くので、日本酒だ、と答える。
それを聞いた婆さんは何度も首を横に振り、健康のために一番いい酒は赤ワインだと力説しはじめる。
暫しお互い、健康にいいと思ってる酒の話をし、
「それでは今後ともお隣様としてヨロシクね」といった感じで婆さんは家に引っ込んでいった。
それからしばらくして、また「星野さーん!」という声が聞こえたので縁側の窓を開けると、やっぱり婆さんが庭に立っていて、今度は手にしたプラスチックの容器をこっちに向けて掲げている。
「赤ワイン」
何の容器かわからないのだが、婆さんの差し出す赤ワインの入った蓋のついた容器を受け取って、また暫し立ち話をする。
まあ、いってみたら飲みの誘いなのだけど、今夜は俺、忙しい。
やんわりと断った。
婆さんは「うん、そうよね、そうよね。それじゃ、ピーマン食べてね」と、たぶんピーナッツの事を言って、また家に引っ込んで行った。
婆さんのくれたプラスチックの容器に入った赤ワインを飲み干して、新しい酒を取りに冷蔵庫に行った時に、そのプラスチックの容器が何の入れ物なのか、ふと気がついた。
宝焼酎。
「婆さん、なかなかやるな」とニヤリとする。
今の仕事が終わって一段落したら、今度こそ、婆さんと一緒に飲んでやる。
「まってろよ!婆さん!」と、よく分からないテンションの21時。