W・ヴェンダース監督の『まわり道』という映画で、作家志望のリュディガー・フォーグラーに、ハンナ・シグラが散歩の途中で見かけた何か(それが何だったのか、どうしても思い出せない)を後に思い返し、ホテルの一室でアイロンをかけながら「あなた、あれに気がついた?」と尋ねるシーンがある。
リュディガー・フォーグラーは生来の間抜け面で「いや、見ていない」と正直に答え、ハンナ・シグラはいかにも「あきれた!」という顔で「作家を目指しているのにあれに気がつかないなんて!」と下着かなんかにアイロンをかけたりしながらリュディガー・フォーグラーをなじる。
それはそれとして・・・。
酒の席でなぜだか急に相対する人の眼鏡や髪型が目新しく思える時がある。
いずれもちょくちょく会っては飲んでいる仲。
なのに、突然その人がかけている眼鏡や髪型が目新しいものに見えて来る。
こっちは発見の喜びに嬉々として
「あれ?眼鏡、変えました?」とか
「あ!髪の毛切った?」とか
「あれ?ヒゲそんなにあったっけ?」
などと聞くのだけれど、向こうとしては、
「あのね、ここ4年ぐらいずっと同じフレームだよ」とか
「2ヶ月振りでしょ?そりゃ髪の毛も切るわよ」や
「あの・・・。初めて会った時からずっと同じヒゲなんですけど」
という事になる。
その度に「ああ!俺は今まで何も見ていなかったのだ!」と愕然とする。
なんてどうでもいい話はさておき。
『まわり道』のリュディガー・フォーグラー。素晴らしいです。
ナスターシャ・キンスキー。夢に出てくるぐらい鮮烈です。
ハンナ・シグラは、いかにもドイツ女らしくゴツいです。