尾籠な話ですけど、その、トイレで、いわゆる、あっちの方の、
まあ言ってみれば大きい方をする時に、必ず本棚から文庫本を持って行く習性があります。
用足しにはさして時間はかからない方なので、本を読む時間はせいぜい2、3分なのだけど、なぜか必ず文庫本を持って行きます。
「もう我慢できない!」っていうぐらい切羽詰まった時でも、本棚の前でしばらく足踏みをしながらトイレに持っていく本を選んでいたりもします。
トイレに持っていく文庫本は、すでに何度も読んだ本と決まっています。
何度も読んだ本だから、気に入った箇所のページの端が必ず三角に折れていて、一冊の文庫本にはそういった箇所が何個かあるので、用を足す2、3分の間にそれらを読む事になります。
余り考えずに選んだ本だと「うわー、これ、この間もトイレで読んだわ」とか「このページの端、三角に折ってあるけど、どこが気に入ったとこなのか、さっぱりわかんねえや」なんていう事もあります。
で、今日の用足しの文庫本は、ふと手にした大岡昇平の『ある補充兵の戦い』でした。
何度も読んだ記憶のある「大岡、かあちゃん、品川駅頭涙の別れ」のくだりで涙が出て来ました。
泣きながら用を足し終えると、用を足す前にしていた仕事を放り出して、その短編『出征』を読みました。
ヒジョーに疲れました。
この小説、是非色々な人に読んでもらいたいのだけど、用を足しながら読んだ本を借りたいって人は、まず、いないよね?